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手をつなぐ(野良犬)

「………なんで、手をつないでんの?」
「え、つなぎたいから?」

いつの間にか、本当にいつの間にかごく自然に細くてなめらかな手が私の手に絡んでいた。
くそ、すべすべしててムカつく。

「…………」
「あ、赤くなってる」
「うるさい!!」
「手、つなぎたくない?」
「つ、つなぎたくない!」

一瞬なんか迷いが生じた気がしたけど、気のせいだ。
私はこいつとなんか、手をつなぎたくなんかない。
絶対ない。
間違いなくない。

「そっか」

私が前を向いたまま言うと、あっさり野口はそう答えた。
それからしばらく無言で歩く。

「…だ、だからなんで手を放さないのよ」
「え、だってつなぎたいもん」
「だから、私はつなぎたくない!」
「いやだって、俺はつなぎたいし」

は、話が通じない。
いつもいつも思うが、こいつ基本的に人の話を聞いてない。
ていうか話は聞くが、それを実行はしない。

「だ、だから」
「嫌だったら、殴ってでも振りほどけばいいじゃん」
「て、手をつながれてちゃ殴れないじゃん!」

そうだ。
そういうことだ。
殴ったりできないから、振りほどけないのだ。
なんとなく、自分から話すのが惜しいな、とかは思ってない。
絶対思っていない。

「そっか、手を握ってたら殴られないのか。いいこと知った」

そう言って、隣の眼鏡は更に手の力を込めた。
その熱に、更に体の体温が上がる。

「~~~っ」
「あ、手に汗かいてきた。緊張してる?」
「だ、ば、ちが」

くっそ、なんで私はこんな新陳代謝がいいんだ。
悔しいやら恥ずかしいやらムカつくやらで、言葉にならない。
顔が熱い。
これは怒りだ。
それ以外の感情はない。

「手を握るのって、なんかいいね」
「…………」
「心がつながってるって感じ。ついでに体もつなげたいね」

その言葉に、今度こそ私は隣の男を蹴り倒した。

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眼鏡(world)

「ねえ、その眼鏡、取る、あなたどうなる?」

私の唐突な質問に、エリアスは眼鏡の下のトパーズの目をパチパチと瞬かせた。
そんな間抜けな仕草が相変わらず似合う男だ。

「えっと、どうって?見えにくくはなります」
「そうじゃなくて。外すと、ネストリがあんたの性格が変わる、言ってた」

エリアスは理解したのか、ああ、と言って小さく苦笑する。

「そんなことないですよ」
「そうなの?」

エリアスは困ったように笑いながら頷く。
そして眼鏡の位置を直した。

「ただ…、世界がぼやけるでしょう?」
「ん?うん」

曖昧に相づちをうつ。
私は目がいいからよくわからないが、確かに目が悪い人が眼鏡を外したらぼやけるだろう。

「だから、怖くないんです。血も悲鳴も、人の死も。遠く感じるんです」

エリアスはそう言って微笑んだ。

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契約(BL)


「また死にかけてるんすか」
「………」

据えた匂いのする部屋に入ってすぐ目に入ったのは、先輩の行き倒れた姿。
見事に玄関先でくたばっている。
返事をする気力もないらしく、ぴくりとも動かないで突っ伏していた。
とっちらかした汚い部屋に勝手に上がりこみもう一度声をかける。

「意識あります?メシ用意しますけど、すぐに喰える方がいいすか?」
「…………」

姿を見たのは四日ぶりだが、もしかしてその間何も食べてないのだろうか。
つーか生きてるだろうな。
ちょっと不安になって、しゃがみこんで首筋に手を当ててみる。
脈はある。
よかった、最悪の事態ではないようだ。

「とりあえずおかゆでも作ります。もう少しくたばっててください」
「…………」

ぴくりと手が動いた気がする。
起きてたのか。
とりあえずさっさとエサを与えよう。

そして奥の台所へ行こうとして、足を止める。
部屋の真ん中には、30号のキャンパスが置かれていた。
赤を中心とした原色がぶちまけられた、風景画。
一瞬して眼が奪われ、心臓が鷲掴みにされる。

苦しい。
動悸が激しくて、胸が痛い。
息が、できない。

その両手ほどの小さな世界に、引き摺りこまれる。
焦燥感に駆られて、叫び出したくなる。

「う………」

ずっと見ていたかったが、後ろで呻き声が聞こえた。
それで我に返って、眼を閉じる。
一回、あの赤い世界を視界から遮断する。
はっと、短く息を吐く。
体の中を渦巻く熱を、一緒に吐き出すように。
このままじゃ、息もできない。

「とりあえずは、メシだな」

絵は後でゆっくり見ればいい。
それは、俺だけに許された特権なのだから。



***

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つづきはこちら

文化祭(青白)



「おい、ちょっとこい、三薙」

さっさと着替えたいのだが、その格好のままお酌しろとか、双兄にも岡野にもおっさんみたいなことを言われていまだに俺はスカートのまま。
もう慣れてきたし周りも何もいわなくなったが、すーすーして落ち着かない。
ちょっと屈むと普通にパンツ見えるし。
女の子ってよくこんな頼りないもの着れるな。
お腹冷えそうだし、派手な動きできないし、とにかく落ち着かない。
女の子って大変だ。
女心がひとつ分かった気がする。

もうこの際開きなおる。
いい勉強になったと思っておこう。
代償は大きすぎたが。

「何?」
「いいか、あのギャルが1」
「は?」

双兄が顎でしゃくった先には、ちらちらとこちらを見ている佐藤と槇と岡野。
教室内の女子の視線は自然とこちらに向かっている。
まあ、いいけどさ。
慣れているけどさ。

「で、あのお団子の子が2」
「へ?」

ギャルっていうのは、岡野かな。
ギャルっていうかむしろヤンキーよりな感じもしないでもないが。
まあ、ギャルだよな、派手だし。
ちょっと言葉遣いも態度も乱暴だし。
でも、すっごい優しいしいい子だよな。

お団子っていうのは、佐藤か。
最近ちょっと元気なかったけど、ようやく元気復活してきたかな。
さっきも自然だったし、早く元に戻ってくれるといい。

「で、あの清純派が3」
「うん?」

槇のことか。
今時の女の子からするとぽっちゃりしているが、槇の穏やかで優しい雰囲気にはすごくあっている。
肌も白くてふわふわしていそうで、思わず触りたくなる。
穏やかで優しいのに、いざっていうときはしっかりした芯の強い子だ。

「さあ、どれだ」
「は?」

双兄が何を言ってるのかわからず、さっきから間抜けな疑問符の連発だ。
俺が首を傾げると、双兄は仕事中のような真剣な顔をしていた。

「俺は2だ」
「だから何?」
「お前らは?」

双兄はテーブルに視線を巡らせる。
紙コップでコーラを啜っていた天が何気なく答える。

「1」
「栞ちゃんと真逆じゃねえか」
「それとこれとは別の話」

四天と双兄の視線が一兄に集まる。
一兄もやっすいインスタントコーヒーをテーブルに置くと表情を変えることなく答えた。

「3」
「一矢兄さんも1かと思った」
「洋食ばかりだと和食が恋しくなる」

納得したように双兄と天が頷く。
双兄はにかっと笑うと、アイスコーヒーが入っていたすでに中身のない紙コップを握り閉める。

「じゃあ俺2で。ああいうタイプもいいよな」
「双馬兄さんはなんでもいいんでしょう」
「当たり前だ」

いっそすがすがしいほど言いきってみせる。
そう言われると、もう何も言えなくなる。
そして三人の視線が俺に一斉に向かう。

「で、お前は?」
「え、え、え!?」

焦って話題にあがっている三人を思わず見てしまう。
三人はにこっと笑ってこちらに手を振ってくれた。
顔が熱くなる。
女の子はやっぱり、かわいい。
えっと、あの中で選ぶとしたら。

じゃなくて!

「ていうか、何いってんだよ!そ、そんな、選べるわけないだろ!」

そんな風にあの三人を見るのはなんか失礼な気がする。
ていうか少し仲良くなったばかりなのに、顔が見れなくなりそうだ。
次しゃべる時に変に意識してしまいそう。

「さ、三人とも、選べないよ!」

誰にも聞こえないように小さな声でぼそっと言うと。
双兄は真面目な顔で頷いた。

「三薙は三人全員、と。いやあ、豪気だ」
「さすが兄さん。男らしいなあ」
「大きくなったな、三薙」

口々に俺を褒めたたえ、肩や腕をぽんと叩く兄2人と弟。
俺は熱くなった頭を抱えて、叫んだ。

「そんなこといってねえええ!!!」

そして教室中の視線を集めた。

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